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天網恢恢

12/26

僕は言葉を覚えるのが遅かったけれど、6つの頃ピアノの椅子から転げ落ちて、頭を打ってから堰を切ったようにお喋りになった。 僕の喋りたいことは正しく機能する言葉で、順番に並べることができたし、うまく伝わらないときは上手なたとえ話をすることも出来…

12/17

上司がポケベルの話をしてくれた。閉塞的で親密なコミュニケーションツールだった。彼女たちだけが分かる暗号で、熱心に少しの言葉を伝え合う。すごく素敵だ。 まがいなりにも音楽をやって、色んな人に会った。家のないフォークシンガーとか薬中のパンクロッ…

12/12

雪が降ったので、色々なことを思い出した。 僕の生まれた町はとても寒くて雪の多い場所だった。僕が生まれた日も大雪で、助産師の車が病院へ向かう道中動かなくなり、その間母は僕を腹の中に押し留めるのにかなり骨を折ったと聞いた。 あの子と最後、屋上へ…

3/7

ウェルベックの言ってることは今まで確かに再三言われていたことで、今や誰もが苦悩を知らずに真実を知ることが出来る。その真実に価値はないと思うんだけど、とにかく耳慣れた真実にすれ違う元気のいい柴犬を眺めるような気持ちになる。 だけどいざそれにつ…

3/17

大学にいた頃は知りたいことなんかひとつもなくて、知ってることだけでどうしてか偉ぶっていたと思う。映画を見て本を読んで、それで友だちとあの俳優はどう、脚本がどう、この作家はすごい、あそこのスパゲティはうまい、そんなことばかり話してる。進んで…

3/6 惨めな日のこと

言い慣れた言葉が出てこない。正確には、あらゆるタイミングで白々しく響く予感が結末まで教えてくれていたので口にするのが憚られる。馬鹿じゃないそれくらいわかる。だけど伝えるべきことはそれ以外になかったと思う。彼が同じように、その状況を防ぐため…

2/27

足の悪い老人が、昼過ぎに太ったビーグル犬を散歩させている。 子供の描いたようなデタラメな絵がプリントされた安いナイロンのアウターを着た少女が、120フィルムのプラスチック製カメラを構えて冴えない音のシャッターを切った。キッチュ・キッズはここ最…

2/24

映画や小説、演説や音楽に僕たちが見てるのは結局のところ「嘘つきかどうか」で、内容も何も本当のところで重くない。「正解かどうか」ももちろん関係ない。創った人が本当のことを言っているかどうかだ。どんなに無様でも本当のことを言った人の方が、隅々…

2/20先日の悲しい日のこと

安いぼろアパートに住んでいる。湿気がひどいこと以外特に不満はない。むしろ良いところがある。駅から近い。それに夜景が見える。 夜景はキレイという感じじゃない。ここは山を切り拓いた住宅街で坂が多く、細い道路に沿って家々が密集しているので実に生活…

2/19

突然心を鷲掴みにする何か、法則性の無い何か、これまで偶然発見出来ただけで、これからはどうかわからないことが不安だ。それは人生に意味とか喜びをもたらしてくれることもあったし、今もただ風に弄ばれるボロ切れのように引っかかりなびくだけで、何も与…

2/5

まさか彼がそんな立派な人間になるとは思いもしなかったけど彼の恋人のこと私もすごく好きだから、彼らが自分の力で欲しいものを買ったり好きなところへ行ったり出来る素敵な毎日があることが勝手に嬉しい。 相対的に金にこれでもかと制約を受ける自分が情け…

12/29

喪失感に名前をつけることが出来るのわたしまだ救いがある。 何時間も眠れない日は何か食べてその味を分析して余計なことを考えないようにする。甘い甘すぎる辛い苦い…

12/28

自分のこと割といいやつだって分かってる、そう思ってもらえるように努力しているし、誰かが嫌な思いをしないようにばかり考えて行動しているから。自分のそういうところが本当に卑怯で嫌だ。誰かの不本意な攻撃によりいつも被害者になることができるように…

11/19

生活はどうも難儀で気が滅入る。働けども我が暮らし楽にならず、隣の芝生は青い。 こんなに自分の生活だけで苦しく果たしてどんな芸術が生み出せると言うのか。 哲学者の母は奴隷制であると本で読んだ。 私は誰の母なのか。昔は、キリストにはなれそうもない…

ハーモニウムのゴハン私の読書遍歴

母は壁一面の本棚を絵本で絵本で埋め尽くすほど絵本が好きで、保育士になる前は絵本作家になりたがっていたが、食えないという理由で両親に反対され、絵本作家になる夢を諦めた。 絵本はよく読んだ。好きだった絵本は特にないが、島田ゆかのバムとケロシリー…

ふぐり丸たまお君の絶望と幸福

彼が私を嫌っているのは明白な事実である。 おそらく彼の幼少期に私が彼に対して行った一連の愛情表現がその主な原因である。例えば散策中の彼を無理に抱き上げて強く頰ずりしたり、首を掴んで布団の中に引っ張り込み湯たんぽとして活用したりといったことだ…

9/29

いつの間にか9月も終わろうとしている。 さっき眼科の前に介護用タクシーが停まるところを追い越してきた。 沖野くんの紹介をする。 「神に耳はない。」と修司くんはよく言った。 彼は今年で26歳になる。彼について知っていることは、精肉店で牛の骨の周りに…

7/4

生きていることの方が不自然だ。不自然なことを続けているので大変疲れる。 何もかもを伝えずに分かり合ったようになって生きていけたならどんな気分だろう。最高なんじゃないかと思う。本当は? 生きている僕たちの本当とは何のこと何だろう。社会は、勝手…

6/22

僕は僕のことが好きなので自分を馬鹿だとか糞だとかは本当は思いたくないんだけど、誰かにそれを指摘される前に自分で自分を卑下することで万が一指摘された時用のショックを軽減しようとする試みをずっと続けていたら、いつの間にか本当にそうなってしまっ…

神話の話

まず初めにつがいの肉食獣がいる。彼らは避妊をしないので数え切れないくらいの子どもがいるはずだが、どこを見渡しても彼らの子どもは一匹として見当たらない。どこかへ行ってしまったのか、死滅したのかはわからない。ただこの世界には彼らと同じ生き物は…

5/24

心までかわいい女の子のことみんな大好きだよね。本当は弱虫で子どもみたいな男の子もみんな好きだよね。私も好きよ。

5/20

誰の心も動かさず誰の気持ちも揺さぶらないことを望んでいるはずなのに書きたいことばかりある。今日はディスコミュニケーションという言葉ばかりが耳に入ってくる。コミュニケーション不全。でもぼくにはこれが自己療養のささやかな試みではないことをわか…

5/18

大学に通っている間は常に自分の頭の悪さにがっかりしていた。毎日がっかりする。失われた情熱にもがっかりする。好奇心や探究心のなさにがっかりする。年号は頭を素通りしてる。20何年かそういったことを短期記憶で済ませてきたせいで脳みそはもう何年にな…

4/30

人生においてすり減らないものリストを作ろうと思ったら紙がなかったし、よく考えたら紙なんか必要なかった。

4/27

こうやってこのままクサい自我を失ったフリして生きていったら、最終的にどんな人間になるんだろう。 僕にとって先生は肯定の象徴だけど、先生にとっての僕もまた肯定の象徴なんだろうと思う。だって僕が先生を先生たらしめてる門下生なんだから。門下生のい…

4/25

ゴミでぱんぱんに膨らんだ燃えるゴミの袋を、燃えるゴミの指定日にゴミ置場に置くってことは簡単そうに見えて実に難しい。一人暮らしを始めて5年以上経つけど、僕がこれをうまくやれたのは数えるほどしかない。だけどこの間ただの紙切れだと思って捨てたもの…

4/24

僕には自信のあることが一つもない。これは胸を張って言える。これだけは誰にも負けないだとか、これだけは譲れないものというのが一つもない。誰にも真似出来ないようなオリジナリティもない。 僕は自分の顔が美しいと思ったことがない。醜いと思ったことも…

4/23

途方もない、あるいは漠然とした、もしくは途方もないうえに漠然としている喪失感に出会ったこともまだ一度もない。 だけど思い返せば信じられないくらいたくさんのものを今までに失ってきたし、今手にしているものだってこの先ずっとあるのかと言われたら、…

4/22

真実はパチンコ玉のように事実を歪んで映している。誰にとっても必ず事実ほどつじつまが合わない。誰かと同じパチンコ玉を見つめても化け物のように奇妙にうねった自分が見える。創作という行為において大袈裟に言って絶望と希望があるとしたら、それは「誰…