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天網恢恢

トイトイについて

 

 

カナザエル諸島のケブナ島では、トイトイという鳥が神として崇められているらしい。と言っても、トイトイは島のいたるところにいるので有り難みはない。ただこの島の伝承に「神の脳は鳥に姿を変え、ケブナを安寧へ導いた」とある。

ケブナは地底でぶつかり合ったプレートが跳ね上げた岩盤を、さらにその真下から波が吹上続けたことにより、ドーナツ状の岸壁ができ、更に波で削られた内側の岩によってドーナツの穴が塞がって出来た非常に珍しい地形の島だ。海上の盆地、凹島、ボウルアイランドなどと呼ばれるこの地形は世界に5つしか存在せず、その中でケブナが最大の面積を誇っている。

 

トイトイはケブナにしか生息していない。外皮が非常に弱く見た目は動物の脳そのものであるが、神経系だけで繋がった2つの目玉と嘴がある。生物学的には鳥ではなくその特異な生態によりあらゆる生物に分類されていない。栄養生殖で増えるが植物ではなく、運動機関はあるが捕食はしない。トイトイの栄養源は未だに解明されていないが知識と経験という説が有効らしい。

トイトイは無性生殖で個体を増やし、シンパシーと呼ばれる伝令物質を介して母体に情報を伝達する。母体は栄養過多になると身体を切り離し別の個体をつくり、母体から剥離する。

ケブナにはトイトイと同じようにノギイと呼ばれるネコ目ハイエナ科に属する動物が存在しており、ノギイは主にトイトイを捕食する。ノギイはカナザエル諸島全域に生息しており、動物の脳を好んで食べる。ノギイとはケブナ語で「神食い」という意味だ。

 

人間がこの土地にやってきたのはこの閉鎖的な食物連鎖が完成した後のことである。

トイトイ母体は各個体に召集、伝達、自死の3つの伝令物質を伝えることが確認されている。

保身の為の召集(母体に危険が迫った際各個体を鎧のように纏う姿が確認されている)、各個体の記録情報を母体に集結させる伝達、母体の情報処理能力を超えないための情報削減による自死の3つだ。

自死についてはノギイが存在している限り滅多に確認出来ないが、人間が住み着きノギイの駆逐が始まってからは4度観測されている。

 

トイトイが神として崇められるようになったのは、1955年にカナザエル山噴火の火山灰による不作が3年に渡り続いたことがきっかけである。トイトイには保身のために攻撃する能力がなく、人間は素手で捕獲することが出来、タンパク源としてその生活を支えた。人間たちは子トイトイに知識を与えるだけで新しい食料が手に入る。彼らは良好な関係を築き不作を乗り切り、その感謝をあらわしトイトイを神と崇めるようになったと文献にはある。

 

現在トイトイの母体は一体しか確認できておらず、その全長は6メートルを超える。どれ程の知識がそこに貯蔵されているか調査するために研究者たちは手を尽くしているが、未だに解明されていない。