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オーケー、ボーイズ&ガールズ

3/6 惨めな日のこと

 

言い慣れた言葉が出てこない。正確には、あらゆるタイミングで白々しく響く予感が結末まで教えてくれていたので口にするのが憚られる。馬鹿じゃないそれくらいわかる。だけど伝えるべきことはそれ以外になかったと思う。彼が同じように、その状況を防ぐために買って来た安い、悪いウィスキーをマグカップで飲んで、とうとう言ったが結果は予想通りだった。

喉が焼けるようでカラカラに乾いているのに、惨めな言葉は牢獄から出られて上機嫌だった。まるで長い理不尽な生活に慣れ過ぎたせいで自分の罪をすっかり忘れた囚人みたい。これらは、行為によって、また相手の善意によってポジティブな非言語として受け取られて来た気持ちの、無様な成れの果てだった。仕方なくなって、続けてウィスキーを飲むしかやることが無い。

語るべきタイミングとしては必然的で最悪なシチュエーションだったせいで、飛び出る言葉の惨めさと言ったらなかった。口から無邪気に飛び出た後、まるで野に放たれた猿のように滑稽に戸惑って、緑の草の中にポツンと浮いちゃって、かわいそう。言葉なんて、こんなものじゃないか…必要な時にはいつも冷静でなく、初歩的な文節で躓き、短い旅の果てにすっかり違った形になる。補うための態度がなければ健全に機能しない。

とにかく自分勝手に喋り尽くした後酒が弱いので気分が悪くなった。身体中浮腫ませたまま落ち着かない眠りがあった。

目が覚めたら何もかも変わっていないだろうか、なんども口にしたが初めての言葉に全てが変わってくれていたらいいのに。

翌朝は曇りだった。白々しくよそよそしいいつも通りの一日だった。

予想できている、それもきっとその通りになるだろう予想が出来ているのに、惨めになることばかり繰り返す。どこを歩いても突き当たる問題の数々は、必ず一番惨めな方法が正しさを持っている。クールに行こうとしても無駄だってわかってるのに。一度もうまくいった試しがないんだ。結局、あの成れの果ての無様な言葉と同じようにしか自分が生きられない。