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オーケー、ボーイズ&ガールズ

love you down

 

僕は夜の木の形が、ガサツで柔らかい紙の吸い上げる液体の形だということに気づいた。もしかしてオゾン層が、もっと上の空が僕たちの星を吸い上げているのかもしれない。そして僕たちもいずれはそれに吸い上げられて、知らないところまで行くのかもしれない。

僕は猫はいつだって壁をすり抜けると思う。なぜなら僕たちの存在が、何をもっても絶対なんて言えないからだ。僕は時々思う。USBの方が多分まだマシ。僕たちよりも優れている。古いMacBookにもかっちり差し込める。鍵穴と鍵みたいにぴったりなんだ。それに忠実に記憶する。波にさらわれる白い貝殻のように、消えたりしない。そして忠実に伝える。途中で尻尾や葉や羽が生えて飛んで行ったりもしない。

 

僕は信じない。君たちは知らないかもしれないけれど、僕たちはいつだってただのハリボテなんだよ。泥人形でもいい。そこに付箋で様々なデータを貼り付けただけのものだってこと。僕は知ってるんだ。初めて気がついたのは高校三年生の時だ。僕はミーちゃんと向かい合っておしゃべりをしていたんだけど、突然猛烈な違和感に襲われた。次に彼女へ相槌を打った時、ミーちゃんは僕の知っているミーちゃんではなくなっていた。もちろん彼女と話していた内容も、彼女の酷い体型も醜い行動も好きな食べ物のことも、全部覚えている。僕は泥人形にそれだけたくさんの付箋を貼っていただけだったのだ。

 

それは鏡の中でも起こる。だから僕は信じない。明日僕たちは壁をすり抜けるかもしれないから。

 

僕は今だけを愛してる。海馬がウィルスに感染してしまったから。調べる方法があるよ。何か大事な思い出を思い出してみて。その記憶に君自身が出てきたらそれはもう、やられちゃってるね。

愛してるって言うのはさ、つまり好きってことじゃないよ。僕は今って時間だけならどんなことでも受け入れることができるって意味だよ。でも過去と未来は別だ。過去に起こったことは悔い続けるし、未来に起こることは怯え続ける。そういう意味だよ。

 

そして僕たちの持つ鍵穴というのは、プラスチックやアルミや銅とは違う。最低な代物だ。プレデターみたいにグロテスク。僕なんて自分のがどうなってるかさえ知らないんだ。知ってるのは鍵を持ってるやつだけ。僕は付箋だらけの泥人形が付箋だらけの泥人形と合体したがることに、泥人形じゃないという言葉の欲望を感じている。僕たちはそうやって欺瞞の中で心を育てていくんだ。

それは素敵なことなんだよ、ボーイ。

欺くことはいつだって正直さを持ってる。もしかして一番正直なものなんじゃないかな。欺瞞の背中にはいつだって本当のことしか書かれていないんだから。ただ良くないのは、喧騒に慣れて耳を澄まさないことなんだ。

 

僕はさっき、朝がやって来る前に空が街に横たわっているところを見てしまった。まだ街頭だって付いたまま。本当は見ちゃいけないんだよ。誰かの寝顔を覗き見るなんて、デリカシーのないことしちゃいけない。これから僕らが起き出すより早く、他の生き物の何よりも早く、彼は一番高いとこまで行って身支度しなきゃならない。僕空になんて生まれなくてほんとよかったよ。早起きするよりウトウトし続ける方が好きだもん。

 

ねぇ誰もミランダ・ジュライの映画を観てないの?素晴らしいのに。多分あの子、うんこを出し入れするってメールしてデザイナーのババアを興奮させたあの小さい男の子、きっと期待したんだと思うよ。あの音が朝を連れてきてるんだって。まさかコインだとはね。だけどここってそういうとこなんでしょ。I know,I see.そういう付箋が貼ってある水槽なんだ。

 

ベイビー。僕どんなことだって話しても構わないんだ。前髪を切りまくったよ。泥人形だなんて嘘。僕たちは形だ。かたち。ハグだって出来る。もしかして君をすり抜けることがあるかもしれないけど。それはそれでナイス。どこかで混ざり合うかもね。そしたらベリーナイス。

 

僕が信じるのは目に見えないものだけだよ。きっと僕の目がいいからだね。たとえば僕たちの井戸の底に流れてる大きな水脈。それが生み出す心象。使い古したブランケットの匂い。テニスボールの軌道。月の光。稼働中の洗濯機と冷蔵庫。オーブンは見ちゃうけどね。トンネルの中の排気。なにかにまつわる関係性。おしゃべり。メロディ。チキンナゲットのカロリー。それは嘘だけど。実はUSBのことなんかちっとも信じてない。嘘を忠実に伝えたって鉄は食えないよ。プラムなら食べられるし、鳥は羽を整える。飛んで行っちゃうかもしれないけど、それは紙が水を吸うのと同じだから嫌ならロウで固めるしかないね。でもワックスペーパーにしたらもう上に文字は書けないよ。僕それは少し阿呆らしいと思う。短い鎖で犬をつないだら、結局自分が嫌になるだけだもん。悲しい犬の顔が好きならいいけど。そんな人いる?

 

ハニー。僕君たちがため息みたいに短い文章を書き続けること、僕はグミみたいに食べ続けてるんだ。果てのない自己紹介だ。出来たらなにもかも分かりたい。君が見えてほしいと思う君を、僕は見たい。つまり僕たちは他にいて、透明で、いつだってぺたぺた泥を塗ってかたちを作ってる。透明な僕たちが他のかたちに付箋を貼ってる。なんて素敵なんだろ。君が許してくれるなら実は、透明な君を紹介してほしいけど、だって何度も会ってるのに口を聞いたことないのって気まずいよね。ごめん、僕も次にあったら僕をうまく紹介出来たらいいなと思うよ。

 

こんな前向きなこと書くの久しぶりですごく嬉しい気分だよ。