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オーケー、ボーイズ&ガールズ

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いつでもなんでもできると思っていたけれど、どうもそうじゃないらしい。若くなくなって気がつくことのひとつかもしれない。

冷蔵庫に卵と牛乳、砂糖があってもミルクセーキを作らないのと同じ。そして君はミルクセーキを作らずに人生を終える。そういうこと。

僕は煙草を吸うけれど、2年くらいずっと喉が痛い。けれど喉が痛いことよりも、嫌なことを考えず何もしなくて良い時間のために煙草を吸う。ほんの数分。その数分間だけ僕は本物の木偶の坊を自分で許せるのだ。当たり前のように僕は良い歌声を失ってしまった。牛乳ばかり飲むからミルクセーキが作れなくなったというわけ。でもまぁそんなもんだよ。

部屋が散らかっていたら片付けなければならないし、空き瓶は金曜日に捨てなければならないし、洗濯をしたら日の出ているうちに干さなければならない。僕は木偶の坊の僕を許せないから仕方がない。魚は陸では息が出来ない。

 

音楽は良い。僕の好きな音楽は良い。素晴らしい。僕は僕の好きな音楽を良く知っているから、僕の作る曲はもっといい。けれど僕は牛乳ばかり飲んでいる。もっとひどいことにベースにおいては生卵を我慢して飲んでいるような状態。なんとかしなきゃと思いながら僕は健やかな生活の呪いにかかって、僕を責める僕にひどく疲れている。とにかく誰かのせいに、何かのせいにしたい。僕は僕を守りたい。どう考えたって、かわいそうだ。

そう考えているはずなんだけど、僕はやはり僕にひどい仕打ちをし続ける。挙句死んじまえとさえ思う。

 

僕はいつか深い夜の底の、一番高い場所から君と、退屈な町を見下ろして話しをした。君は僕の声が一番好きと言った。でも結婚して子どもを産んだって聞いたよ。まぁそんなもんだよね。とにかく僕は夜が好きだった。僕は許された。いつでもひとりが好きだ。ほんとうは。君が心にいてさえくれたら僕はひとりがいちばんいい。誰かと何かを一緒にやるのは大変なことだ。でもたしかにいつも思い出す。君やみんなとジョーダンを言って笑った時のこと。