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オーケー、ボーイズ&ガールズ

6/15 木馬の騎手

 

僕たちがまだひとりで生きていくことができてもひとりきりでは生きていくことが許されなかった頃、身体の大きさに対し世界の大きさが比例して成長することなく、木靴の中で行き場なく回り込む指の痛みの全てが、世に語られる希望と言うものだったと気付くのは、こんなふうに落ちてしぼんだ風船の口に偶然風が入り込むような、悪意のない、素知らぬ情熱にほだされた時だけになった。

 

情熱はない。まだ若かった頃手に持っていたあれも実は怒りであり、情熱ではない。

僕はただ自分が美しく静かな、誰にも見つからない湖のように健全で優しい人間になるとばかり思っていた。眠る前に時々描いた日記を覚えている。美しい髪を描いた。僕の野心は本当のところ、美しい長い髪と優しい心を手に入れることだったのかもしれない。最も遠い場所にいる気がするが、過去の僕の望みなど、今の僕には関係のない話になってしまった。

 

僕を好きな人はいつまで僕を好きでいてくれるんだろうか?

彼らの情熱も夏とともに根こそぎ波にさらわれた後に、死人の声が入った巻貝だけが砂浜に残るのだ。それでもまだ何か足りないと思うのだろうか。まだ伝えそびれた何かがあったと虚しく思うのだろうか。君たちの顔や仕草や着ている服が僕に語りかける言葉ではない何かを僕はどれくらい感じているのだろうか。それとも全くわからないでいるんだろうか…とても切ない気分になるね。ほんとうに、世界にひとりぼっちなんじゃないかと僕のナルシズムが嬉しそうに頭を持ち上げているのがわかる。

 

先生は横にないなら縦にあることもある、と言った。実際縦にはそれらはある。なぜなら僕が今ここにいるので。どこへ行くかは知らないけれど。次の僕も兵士の骨の上に咲く花を踏みならして歩いていくわけだけど。

 

分かってもらえなくてもいいという考えが僕を駄目にしている。諦めじゃなくて怠慢なので。それは。伝達しない導線の先にあるのはいつもガラクタ。シナプスのない脳みそは脂肪。語らない僕は肉塊。ずぶ濡れのダイナマイト。

 

清く正しく逞しく、僕は生活をやる。真人間になるのだ