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オーケー、ボーイズ&ガールズ

7/2

 

長い間土の中にいた僕らの友だちが初めて話す声を、今日僕は聞いたけど、それよりも1日早く僕たちは夏をやったので得意な気分になった。

 

昨日、友だちが運転する車の窓から夏に咲く花が見えた。僕が、好きな花だ、と言ったら二人は「タチアオイ?」と声を揃えて言った。僕はこんなに幸せなことがあるか?と考えた。

いつだってへどもどつかえながら話している。好きな友だちには、伝わらなくていいなんて思えない。欲深いだろうか。分からなくていいなんて思えない。でもいつも上手に伝えられない。

 

僕たちにとって特別な、素敵な女の子が一緒に青い車に乗っていて、「私って何者にもなれないで、誰かと結婚して、子どもを産んで、それだけの人生なんですよきっと…」と僕らに話す。僕たちは参る。君はもう誰ともまるで違うスペシャルな女の子なのに、そんなことを考えていたなんて!僕は前のSAでソフトクリームを食べたせいで腹を冷やし、夕立みたいに突然の便意に襲われた。運転してくれている友だちが速やかに次のSAへ車を滑らせ僕はこんなに大事な話の途中にもかかわらずトイレへ駆け込む羽目になった。僕が蒸し暑い個室で冷や汗をかいている間、みんなどんな言葉を彼女にかけたんだろう。ソフトクリームを食べた自分を責めながら彼女にかける言葉を探したけれど、水を流すレバーを探している間に全て忘れてしまった。車に戻ると話は終わっていた。彼女の着ていた水色のワンピースがとても似合っていることにその時気がついた。

 

クーラーの調子が悪く、車内がピザ窯くらい暑くなって汗だくになった。窓からポップコーンみたいな雲が見えるたびに、あれは入道雲?と伊藤くんに尋ね、伊藤くんは、あれは違う、まだ赤ちゃん、と言った。やはり夏はまだ来ていないんだ!

 

たくさんの人に一度に初めて会ったので、やはりへどもどしながら挨拶や自己紹介をした。僕は200円でピアスを買い、さっそく1つ無くしてしまった。水滴に紫陽花の雄しべが2つ落っこちているようなデザインだ。僕の耳には左しか穴が開いていないからちょうどよかった。7年前、意気地が無くて両方開けられなかったままだ。別に困らない。意気地なんか無くてもね。苦しみに耐えるために必要なのは幸福を強く夢見る能力だと先生は言った。

 

7年前くらい、僕は足の指にキラキラした青いペディキュアを塗るのが好きだったと思う。自分の足じゃないみたいだった。僕は今の自分じゃない自分に憧れていたのかもしれない。その時はまだ、鏡だってマトモに使えていた気がする。髪を梳かしたりリップを塗ったり。憧れがあるというのは、自分のいるところが分かっていい。

 

入道雲が僕らの首が痛くなるほど沸き立つワケを彼女は知っているだろうか。笑顔の素敵な彼女が眉をしかめて絞り出す言葉を僕らは分かろうとする。彼女は変わろうとする。僕たちは多分何度でも新しい君を分かろうする。僕たちはあのヘンテコな雲が馬鹿みたいに膨らんでいくことをこんなにも待ち望んでいる。何者でもない僕たちの夏は、いつでも前とは違うんだ。