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オーケー、ボーイズ&ガールズ

2019-01-01から1年間の記事一覧

死人に梔子

深い孤独を感じるのはやはり、誰とも分かり合えないのだと確信めいた仮説がやってくるとき。 君は悪くない。僕の人格が、言葉が、いつだって悪い。どうやったら伝えられるのか、この核心にどんな言葉がひっかかってくれるのか、皆目見当がつかないことがある…

11/20 花に嵐の花

僕の中にある確固たる美しさが、全ての邪魔をする。人間活動のあらゆる面で邪魔をする。美しさは完全完璧であるべきだ。そうじゃなくちゃ、美しくない。不完全なものは完璧な不完全をもっていなければならない。不安定なものは不安定なまま、儚いものは必ず…

11/16 パンドラの箱

これから空もどんどん重くのしかかってきて挙句僕らの身体を芯まで冷やす雪を降らせるつもり。 生活が停滞して僕たちは些細な鬱憤をそっとなすりつけ合う。それこそ雪のように僕たちの無気力が音もなく積もり続ける。 続く日常にささやかな楽しみを見つけ、…

9/4 恋をすることについて幻想

一番重要なのは、劇的じゃない瞬間。劇的じゃない瞬間の中でも、悲しみというにはまだ冷え切らず、憂鬱というにはもう深過ぎる、得体の知れない重い霧のような、やり切れない気持ちがただ、冬の曇った夜のようにのしかかって、朝が来るなんてまるで信じられ…

6/15 木馬の騎手

僕たちがまだひとりで生きていくことができてもひとりきりでは生きていくことが許されなかった頃、身体の大きさに対し世界の大きさが比例して成長することなく、木靴の中で行き場なく回り込む指の痛みの全てが、世に語られる希望と言うものだったと気付くの…

5/26

かなり参っていた。昨日は自転車を漕ぐのも億劫で、15分前に家を出たにもかかわらず遅刻しそうになった。土から立ち上る蒸気は夏の匂いをはらんでいて胸が痛んだ。 僕は実は君のことなど、君たちのことなどちっとも好きじゃない。君と同じようにね。 うまく…

5/3

野暮な看板は朽ちて記憶の景色となり、鶏頭、百日草、古い墓。掻き分けて進むと空き地。 鳥もいない。虫もいない。乾いた土。掘り起こせば湿っている。ここに住むことのできるやつはいない。1人もいない。 ナイター中継とエアコンのカビ臭さ、沸き立つ杉林の…

5/3 草の戸

僕は僕の町を離れるときは必ず、あたかも最初からそこになどいなかったかのように、静かに、散歩にでも行くような気持ちで出て行く。この町を出て行くときもそうした。実際なんの気持ちも沸かない。僕はどこにいても僕であり続け、僕のいない町も変わり続け…

AM11:00のテレビニュース

夜の地下鉄は水っぽい空気の中で、先頭車両に乗っている僕たちはホームの灯りが見えるまで暗いトンネルに映る自分たちの顔を眺めている。僕たちは明治の前の元号が江戸だと思っていたが、調べてみると慶応だった。ずっと前は、綺麗な雲が現れたから、白い亀…

3/31

いつも昨日の記憶がない。友だちが東京へ帰るのが泣くほど嫌だったのに、あれは僕だったろうか?僕の頭に根を張った不細工な広葉樹が僕の良い全てを吸い尽くして、また空へ近づこうとしている。いつか肉も血も骨も、全部奪われるんだろう。残念だな。さよな…

2/9

いつでもなんでもできると思っていたけれど、どうもそうじゃないらしい。若くなくなって気がつくことのひとつかもしれない。 冷蔵庫に卵と牛乳、砂糖があってもミルクセーキを作らないのと同じ。そして君はミルクセーキを作らずに人生を終える。そういうこと…