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オーケー、ボーイズ&ガールズ

2016-01-01から1年間の記事一覧

12/29

喪失感に名前をつけることが出来るのわたしまだ救いがある。 何時間も眠れない日は何か食べてその味を分析して余計なことを考えないようにする。甘い甘すぎる辛い苦い…

12/28

僕にはリビングに一番近い部屋があてがわれていたが、曽祖母が死んだすぐ後に彼女の部屋に移った。和室の六畳間で、押入れの襖一面に描いた絵や好きな映画のポスターや広告を貼った。 冬は石油ストーブを焚いて沸かしたお湯で変なお茶を飲んでいた。姉がダイ…

11/19

僕の未来に期待していた母には、悪いことをした。ひしゃげて薄汚れた文庫本の切れ端を握りしめ「これが私だ」と戯言のように繰り返す人生を、勝手に生きてけ。それしかないんだろ、お前には。何が自分だ、版画じゃねえか。と、鏡に言う。 昔友だちに、ラーメ…

6/22

僕が高校一年生の時友だちだった沖野くんは、映画監督になるのが夢だった。 沖野くんは自分で脚本を書いていて、僕にいくつか読ませてくれた。中でも修司というキャラクターが出てくるものはいつも面白く、冗談しか言わない沖野くんが本当に話したいこと全部…

神話の話

まず初めにつがいの肉食獣がいる。彼らは避妊をしないので数え切れないくらいの子どもがいるはずだが、どこを見渡しても彼らの子どもは一匹として見当たらない。どこかへ行ってしまったのか、死滅したのかはわからない。ただこの世界には彼らと同じ生き物は…

5/24

僕の狭いアパートには猫がいて、晴れの日は窓辺でずっと眠っているし、雨の日には猫用ベッドでずっと眠っていて、夜も僕と一緒に眠っている。彼は時々夢を見ていて、耳や鼻がピクピクしたと思ったら手足をバタバタやる。何か追いかけているんだと思う。4、5…

5/20 犬の話

「メスの犬はシナモンロールが好きか」と砂糖の研究をしている博士に尋ねたところ、それは解明されていない、と博士は首を横に振った。 ロシアの宇宙基地はいつも捨て犬募集の張り紙があり、表向きはクドリャフカに次ぐ宇宙犬の育成であるが、本当のところは…

4/30

人生においてすり減らないものリストを作ろうと思ったら紙がなかったし、よく考えたら紙なんか必要なかった。

4/27

こうやってこのままクサい自我を失ったフリして生きていったら、最終的にどんな人間になるんだろう。 僕にとって先生は肯定の象徴だけど、先生にとっての僕もまた肯定の象徴なんだろうと思う。だって僕が先生を先生たらしめてる門下生なんだから。門下生のい…

4/23

途方もない、あるいは漠然とした、もしくは途方もないうえに漠然としている喪失感に出会ったこともまだ一度もない。 だけど思い返せば信じられないくらいたくさんのものを今までに失ってきたし、今手にしているものだってこの先ずっとあるのかと言われたら、…

4/22

真実はパチンコ玉のように事実を歪んで映している。誰にとっても必ず事実ほどつじつまが合わない。誰かと同じパチンコ玉を見つめても化け物のように奇妙にうねった自分が見える。創作という行為において大袈裟に言って絶望と希望があるとしたら、それは「誰…