6/22
僕が高校一年生の時友だちだった沖野くんは、映画監督になるのが夢だった。
沖野くんは自分で脚本を書いていて、僕にいくつか読ませてくれた。中でも修司というキャラクターが出てくるものはいつも面白く、冗談しか言わない沖野くんが本当に話したいこと全部を修司が話していた。彼は実のところおしゃべりだった。
夏に2人で流星群を見に行った。思いの外綺麗だった。
「俺こういうの、いつか思い出したりすんのすごい嫌だわ」
と沖野くんは半笑いで言った。
なんか違うことやって上塗りしようぜ、と彼は近くの鉄塔に登り始め、地面から3メートルくらいまで登りズボンとパンツを脱いで「チンコ」と叫んだ。
そんな彼の後ろを大きな流れ星が通り過ぎ、僕は確かに、こんなにつまらないことで笑い合う時間を、いつか思い出したりしたくないと思った。
沖野くんは両親の離婚で転校してしまい、それから会っていない。お別れの挨拶も特になかった。沖野くんもあの日のことをこんな風に思い出したりするのだろうか。